笑いは、すばらしい

お正月ですから、今年は、去年のような暗い出来事がなく、明るく、楽しく、だれもかれも光り輝いて毎日を過ごしたいものだとお考えではないでしょうか。 笑いといえば落語を聞くなど、とても良いと思います。上手な落語家の話をお腹を抱えて笑うなんてたいへん身体にもいいですし、楽しいですね。 お寺のご本尊である酒かす地蔵尊にあやかり、「じぞう寄席」の名前で落語会をはじめ、今回で三十一回目を数えるほどになりました。二ッ目を主に招いて、真打ちを時々招くというスタイルでやってきました。お寺の檀家さんという対象とは関係なく、どなたでも、少額で本物を生で落語が聞くことができます。毎回百人位のお客さまが、そのときばかりは本堂は笑いの声がたえません。お世話する方々は十五人で、いろいろの職業の皆さんがいらっしゃいます。寄席の終わった後は、落語家さんを囲んで様々な話が聞くことができ、とても楽しい会です。

ところで、お寺で落語会というのは別に珍しいことではありません。「大往生」を書かれた永六輔さんの東京にあるお兄さんのお寺でも時々開かれていますし、名古屋の含笑寺「含笑長屋」は人心の荒廃して戦後すぐにはじめ有名で、会員になるにも数年待ちだとか。落語は本来お寺と縁がありそうです。 江戸寛永年間、浄土宗・誓願寺の策伝和尚が著した「醒睡笑(せいすいしょう)」は、お殿様の御前で粉香臭いお説教ではなく、面白くて楽しい、落とし話を集めた本です。この本が評判をよび、それが、その後、落語とよばれるはしりになったそうで 「笑う門には、福来る」と昔よりいわれておりますが、確かに笑いのある家庭や笑顔のたえない人というのは、素晴しいと思います。いつも、気難しい顔の人より、ニコニコ顔の人の方がいいのに決まっています。 福井県にある曹洞宗の禅寺、永平寺をお開きになった道元禅師は「和顔愛語(わがんあいご)」と説かれています。笑いは人生を楽しくし、人に安心感をあたえリラックスさせます。さあ、今年は笑顔でいってみませんか。

平成8年1月 吉日

三明寺住職  大嶽 正秦